SS400材と低温脆性
鋼材の中で流通量が多く安価なSS400材。機械設計における材料選定では、まずSS400材が使用可能かどうかの検討から始める事が多いです。しかしSS400材は、安価であるが故に、JISで規定される強度もかなり緩くなっています。一例としてSS400材を低温(概ね-20℃以下)で使用する際は注意が必要です。-20℃以下の様な低温では、鋼材には低温脆性と呼ばれる特性が現れて、常温での強度や靭性(粘り強さ)を満たさずに、脆(もろ)く破断する事があります。SS400材では、靭性の指標であるシャルピー衝撃値がJISで規定されていないので、特に低温での靭性に保証がありません。このような場合にしばしば取られる措置が、比較的安価なSM400B材の使用です。SM材は基本的な強度はSS材と同一の溶接用鋼材で、SS材の上級材料になります。中でもSM400B材はシャルピー衝撃値も規定されているので、靭性不明のSS400材に比べて、低温での靭性がある程度保証された材料になります。しかし低温用材料ではありませんので、低温で一定の強度の保証が必要な場合は、低温用材料を用いる事になります。